粟田さんご夫妻
「旅とピザのお宿 咲色~Sairo~」2022年春にオープン予定

夫の誠士さんは神戸市生まれで登山や旅が好きなアウトドア派。高校時代に青春18切符を使い、仲間とバイトをしながらテントで10日間寝泊まりして、道内を回った経験を持つ。
妻の美咲さんは京都府生まれ。自然の中で育ったので田舎暮らしは特別なものではなかった。だからこそ、誠士さんと行動を共にしているうちに自然の中で暮らすことの良さを再認識したという。

そんな粟田さんご夫妻が移住されたのは2021年7月。そして「旅とピザのお宿 咲色~Sairo~」を2022年春にオープン予定だ。
彼らの移住への道のりを聞いたところ、2段階で北海道への移住を果たしたそうだ。

2017年 7月
誠さんと美咲さん、2人で行った初めての北海道旅行で「いつか北海道に住めたらいいね」という会話が出た。それから、インターネットでちょこちょこ土地探しを始める。
2017年10月
まず1段階目の移住で、田舎暮らしと雪の暮らしに慣れるため「大阪の北海道」と言われる能勢町に引越す。北海道に移住する直前の2021年6月まで生活をした。
2019年 1月
上士幌町で10日間、生活体験をする。その10日間で十勝の全市町村を回り、移住先を上士幌、もしくは中札内周辺に絞った。
2019年 9月
以前より連絡を取り合っていた上士幌町の不動産屋さんに理想の土地を見つけてもらい、移住先が決まる。
2020年10月
土地の契約と、ハウスメーカーが決定する。
2021年 7月
住宅が完成し、北海道上士幌町に完全移住する。
現在、2022年春、宿と店のオープン目指して準備中。

2人が移住先を上士幌町に決めた理由の一つは冬の気候だという。十勝地方に移住すると決めるまでは上川地方も候補地だったそうだが、十勝の方が冬の晴天率が高い。加えて牧場や畑に囲まれた北海道らしい風景、大雪山系に近い土地であるところも気に入ったそうだ。ただ、決めたからと言ってすぐに理想の土地が見つかるわけではない。彼らの希望は農地跡の土地。上士幌では通常、見ず知らずの人が「欲しい」と思ってすぐ買えるものではない。それでも「運と縁」を引き寄せ、1500坪もの土地を手に入れた。

もう一つの理由はその「縁」と言う。土地を手に入れられたのも「縁」、生活体験で知り合った人との「縁」、「この地で生きていくんだ」と決めたのはそうした「縁」を上士幌に感じたからだという。

2人は宿だけではなくピザ屋も始める。それは、町の人とつながりたいという気持ちがあるが「宿」には上士幌町に住んでいる人は泊まりにくいかもしれない、それなら地の物を使ってピザ屋をやることで町内の人にも足を運んでもらえるような場所にしたいと考えた、と語ってくれた。

移住してからは地域の集会に顔を出し、牧場のアルバイトもして名前と顔を知ってもらい、「あの黄色い家の方?」「ピザ屋やる人?」と知らない人に声をかけてもらうようになったそう。「都会の何百万人の中の1人ではその場所に存在することの意義を見失ってしまうこともあるかもしれないが、5000人の中の1人と考えれば自分が1人のプレーヤーとして社会に関わっていることを実感できる」と言っていた。上士幌町には人の流れや活気、クリエイティブな雰囲気を感じているとも。

農村部に住むということ。普段の買い物は、町内に行くのとあまり時間が変わらないということもあり、品ぞろえや価格の面でも、隣町や帯広近くに行くことが多いという。まとめ買いをするので家には大きな冷凍庫があるそうだ。それに、ネットショッピングを利用すれば不自由はない。今の生活に満足している二人だが、都会に旅行に行くと、上士幌ではできない買い物や美味しい食事、美術館巡りをして違いを楽しむそうだ。

農村部での「近所づきあい」についても聞いた。お隣さんの家とは700m離れていて、基本的に年中無休なので結果、「自分から関わらないと繋がれない」という。だから粟田さんは自分から関わりに行く。
田舎に移住する時の心配事として「近所づきあい」を挙げる人は多いだろう。粟田さん曰く、「田舎に暮らすということは、人から離れて暮らすのではなく、都会以上に人と関わり生きていくことだと思う」ただ、「距離感は自分で選ぶことが出来る」とも言っていた。


★粟田誠士(まこと)さん、美咲さんプロフィール
2021年7月に大阪府豊能郡能勢町から移住
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