毎回、多くの方をインタビューしている、上士幌移住者の声。
今回ご登場いただいたのは、(株)生涯活躍のまち かみしほろにお勤めの小嶋則之さん(42)です。

小嶋さんはこれまでにご紹介した方たちとは一風変わった立場というか、仕事をされている方なのですが、その話は後程。ご出身は新潟県上越市。学生時代は埼玉県に暮らし、社会人になってからは東京で会社員をされていたそうです。つまり、これまで上士幌とはまったく縁がなかった小嶋さんでしたが、それを一気に引き寄せたのは奥様の存在があったからです。というのも奥様のお母さんがこのまちの出身であり、その関係から奥様は、子どもの頃から毎年のように上士幌町に帰省していたとか。町内にも親戚や知人が何人もいる、いわば第二の故郷のようなもの。やがて奥様と小嶋さんのおつきあいが始まると二人で何度となく上士幌町を訪れるようになります。回数を重ね、時間を重ねていくうちに、上士幌町の空気、風、光の温もり、音、表情、匂いといった目に見えないものや、五感以外の大切な何かに心惹かれ、いつからか移住を考えるようになったのかもしれません。

ところで小嶋さんがお勤めの「(株)生涯活躍のまち かみしほろ」。とても失礼なのですが、なんだかフワッとしていて、とらえどころのない会社に感じてしまいます。そこでここは、ご本人にわかりやすく説明してもらうことにしましょう。

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「簡単にいうと“まちづくり会社”なんです。上士幌町はいま、<生涯活躍のまち>を大きなテーマに掲げていて、それに向けた取り組みを行っているところです。町民一人ひとりが、住み慣れたこの上士幌でずっと安心して暮らしていけるよう、地域全体で各関係施設との連携が密に図り、問題を探しながら、その対策や解決をしていかなければなりません。そのお手伝いやサポート等を行っているのが、「(株)生涯活躍のまち かみしほろ」なんです。会社は町と関係機関が出資して設立しているので、地域包括ケアに関する業務や生涯活躍かみしほろ塾の運営といった委託事業や、元気なシニアが活躍できる場を構築していくのが主な仕事。ほかにも、移住に関する業務も行っているんです。」

なるほど、とても勉強になりました。それに話の端々に小嶋さんの生真面目な性格がよく表れていたと思います。それはさておき、小嶋さんご自身も2018年4月に一家で移住され、晴れてこの上士幌の町民になりました。それがいつのまにか受け入れる側の立場のお仕事をされるなんて、とても不思議なご縁を感じます。

このように移住者と受け入れ側の両方の立場に寄り添う小嶋さんですが、結婚されたのが2006年。それから10年以上は埼玉県の川越市にお住まいでしたが、深いご縁を感じた上士幌町で安定した収入が見込める仕事が見つかったことと、奥様が地元のことを熟知していたという強みが幸いして、移住を決意したとのこと。移住に関しては、奥様はもちろん小6の長男と小3の次男も賛成してくれたのですが、年長のお嬢さんにはすごく反対されて泣かれたとか。考えてみると親のわがままで移住を決めることは、子どもにしてみるとすごく切ない話ですね。でもお父さんのツライ立場もわかります。それでもなんとか説得して、スタートを切った上士幌での新生活。とくに関東の便利な都会で育った小嶋さんファミリーには、最初の想像とはまったく違う大変なことがさぞかし多かったんじゃないでしょうか?

「それがそうでもないんですよ。長男なんかはこっちにきてから覚えた新しい遊び<けん玉>に夢中になっていますし、次男も毎日楽しそう。子どもは子どもでちゃんと順応しているんだなあと、うれしくなっちゃいますね。生活のことでいうと、たとえば毎日の買い物が少し不便だとか、大きな病院が遠いとか、飲食店が少ないといったことはあります。でも、自分たちは後からやってきたわけですから、ボクらがそれにあわせていくべきだという考え方にシフトチェンジしたんです。それにたとえ上士幌でも川越でも、生活していかなきゃならないのはいっしょ。
だからここはドンと構えて、ダメだったらまた引っ越してもイイかくらいに思うようにしました」

そうですね。そういうふうに割り切った考え方をする人のほうが、案外たくまして、頼りになるものです。小嶋さん。これからも上士幌がすてきな町に育っていくように「まちづくり」に励みながら、移住者の気持ちと受け入れる側の気持ちの両方がわかる、貴重な存在でいてくれることを願っています。


★小嶋則之さん プロフィール
新潟県上越市出身
奥様のお母さんが上士幌町出身のご縁もあり、
埼玉県川越市から北海道上士幌町へ家族4人で2018年移住